ヒメギンポの復活

 ’94年から2年間、僕は後輩とともに、ヒメギンポの繁殖生態を追いかけていました。当時、桜島の約10m四方の観察区には、100個体を越えるヒメギンポがいました。それが今では、全く見ることができません。原因のひとつに、冬場水温が下がらなくなってきたことが考えられます。水温が17度を切ると、ヒメギンポの産卵は始まります。それが’96年以来錦江湾の水温は17度を切ることがほとんど無かったのです。ヒメギンポは年々姿を消して行きました。
 毎年冬になると、ヒメギンポの姿を探しましたが、落胆続きでした。ところが昨年正月、湾奥部で、少数ながらヒメギンポの産卵を確認できました。そして今年、多くの個体が産卵しているのが確認できました。水温は16度を切るまでに下がっています。
 これだけの個体が産卵するのは、’96年以来なかったことです。ヒメギンポたちが、再び錦江湾のどこにでもいる魚に戻って欲しいと願います。こんなに冷たい海が嬉しいのは初めてです。鮮やかなオレンジ色の婚姻色で着飾ったオスが、求愛のダンスを舞うのが見ていると、寒さなど少しも感じません。

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